虞美人草
『力 山を抜き 気 世を蓋う 時利あらず 騅逝かず。
騅逝かざる 奈何すべき、 虞や虞や 若を奈何せん』 項羽 「垓下歌」
(訳; 我の力は山をひっこ抜くほど強く、その気力は世界を覆う。しかし、時運は私に背を向け、騅は走らない。 騅が走らないのはどうしたらよいのか、 あぁ、愛する虞姫よ、虞姫よ、 そなたをどうすればよいのか)
※騅とは項羽の愛馬の名前
これは、項羽が劉邦率いる軍隊に追い込まれた時(いわゆる垓下の戦い)に詠んだ詩である。
明らかに能力では圧倒的に劉邦を上回っていた項羽であっても、優れた人心力をもった劉邦には敗れることになる。
力で強制的に「統率する」マネジメントと、人の心によって自然に「統率される」マネジメント。
この違いは大きかった。
しかし、個人的には、厳しく勇猛であった項羽が自分の身が滅びるまで、生涯において唯一心から愛したと言われる虞姫の行く末を案じている姿を想像すると、項羽も嫌いにはなれない。
有能すぎた所以の結果だったのかもしれない。